人口減少時代をグラフで読み解く

人口減少の時代に起きる様々なことをグラフにして考察

韓国の出生数(月次)が8年ぶりに下げ止まった理由は1人出生に1億ウォン支給か

韓国の出生数(月次の前年同月差) 2015年11月から2024年6月

 

韓国統計庁の出生数の月次を見ますと、2024年4月と2024年5月の2ヶ月連続で前年同月比でプラスになってました。2015年11月以来なので、8年5か月ぶりの出生数の下げ止まりになります。前回の記事で、日本も韓国も中国も台湾も出生数は下げ止まらないのではと書いたのもあり、何故韓国の出生数が下げ止まったか調べてみました。

 

【日本・韓国・台湾の出生数の推移の比較】

日本・韓国・台湾の出生数の推移 2017年7月は100%とした場合の7年間

2017年7月から2024年6月までの7年間の出生数の月次(過去12ヶ月平均)の推移で、2017年7月を100%とした場合の、日本・韓国・台湾の出生数の減少を比較すると、韓国、台湾、日本の順番で出生数の減少が厳しいのが分かります。中国の出生統計は月次がなかったので3つの国になりました。韓国は2017年7月と比較して2024年6月は約60%、台湾は66%、日本は74%という7年間の変化になります。

 

韓国が2ヶ月連続で前年同月で上回ったというのは、日本では2015年6月以降に1度も起きてない事象なので、偶然2ヶ月連続で回復したのではなく韓国で何かが起きたと思い調べてみました。

 

 

【韓国の婚姻数が17%も増加】

news.yahoo.co.jp

韓国で出生数が下げ止まった理由として、婚姻数が17%増加したことがあります。婚姻数の増加の理由を調べると、韓国政府ではなく各地方自治体の結婚・出産支援金が多数始まったことです。いくつか例を挙げますと下記のものがあります。

 

仁川市では、子どもが産まれたら、18歳までに1億ウォンを支給する

 

慶尚南道居昌郡(キョンサンナムド・コチャングン)は出生児1人当たり1億1千万ウォン支給

 

忠清北道永同郡(チョンチョンプクト・ヨンドングン)は最大1億2400万ウォン支給

 

釜山市では結婚式には2,000万ウォン支給

 

ソウル市では結婚式に100万ウォン支給

 

仁川市では、1カ月に約3万ウォンで借りられる住宅を1,000軒用意する

 

富栄グループ(企業)2021年以降に子どもが生まれた社員を対象に、子ども1人につき1億ウォンを支給

 

※ 1ウォン=0.11円 2024年9月現在

 

2021年以降に各自治体が人口減少に危機感を感じて、若者の移住や結婚の促進や出生に対する支援金の額を「1億ウォン(1,100万円)」出す自治体や企業が現れました。

1億ウォンは子供が18歳になるまでに段階的に支給するものですが、世界中を見渡しても桁違いの大きな金額になります。日本では地方自治体が独自で出産支援金として出しているところがありますが10万円なので、それと比較すると韓国の自治体は100倍の金額を出生に投資するという大きな転換点を迎えたように思えます。

 

韓国で行われている結婚支援政策

https://japanese.korea.net/NewsFocus/Society/view?articleId=257195

「1億ウォン現金支給」少子化政策、効果を考えて長期的な対策を立てなければ | 東亜日報

 

 

【ソウル市(900万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

ソウル市と仁川市の人口推移(外国人除く)

仁川市の1億ウォン支給「1億プラス・アイ・ドリーム」によって、人口が自治体で奪い合いになっているのかを韓国統計庁からグラフにしてみました。オレンジの線がソウル市(右軸)で、コロナ前の2019年と比較して5年間で韓国人が96%に減少しております。仁川市は2019年と比較して102%と人口が増加しております。

 

 

【釜山市(300万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

釜山市と仁川市の人口推移(外国人除く)

釜山市でも結婚・出産支援として下記のものがあります。

釜山市ではカップルになったら50万ウォン
釜山市では両家の顔合わせに各100万ウォン
釜山市では結婚式には2000万ウォン
釜山市では新居の家賃を月額80万ウォンを5年
釜山市ではチョンセという賃貸の保証金制度に3,000万ウォン

それでも人口は下げ止まらないのは、1億ウォンという金額と比較してしまうと移住に魅力を感じなくなるのでしょうか。

 

 

大邱(テグ)市(200万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

テグ市と仁川市の人口推移(外国人除く)

韓国の市の人口(外国人を除く)のランキングは、1位がソウルで930万人、2位が釜山市で320万人、3位が仁川市で300万人、4位が大邱(テグ)市で230万人です。1位から4位まで比較すると、仁川市だけが人口が増加していることになります。

 

韓国政府の市の人口統計:https://jumin.mois.go.kr/

 

 

【日本の地方自治体でも出生にお金を出し始める】

横浜市のHPで、2024年10月から「独自の出産費用助成金9万円」が始まります。

出産費用助成金(令和6年10月 申請スタート) 横浜市

 

 

【日本の100万人都市の日本人の増減比較】

2019年と2024年の日本人増加率(100万人以上都市)

2019年と2024年の5年間で日本人人口が増えた100万人以上の都市は、福岡市・さいたま市川崎市・東京23区・大阪市です。

2019年から2024年の5年間で日本人人口が減少した100万人以上の市は、京都市・神戸市・広島市名古屋市仙台市横浜市です。

  増減
福岡市 102.9%
さいたま市 102.4%
川崎市 100.9%
東京23区 100.9%
大阪市 100.4%
横浜市 99.9%
仙台市 99.9%
札幌市 99.7%
名古屋市 99.6%
広島市 98.0%
神戸市 96.8%
京都市 96.8%

 

 

【人口減少の危機感は地方自治体から始まっている】

韓国では、仁川市が出生に1億ウォンと発表した後に、別の市が1億1千万ウォン、次に1億2400万ウォンと、出生に対する地方自治体の需要が自由競争となっています。金額が世界的にも破格なのが韓国の切実さを物語っていて、今後どうなるか、日本の地方自治体も参考にするのではないでしょうか。