人口減少時代をグラフで読み解く

人口減少の時代に起きる様々なことをグラフにして考察

出産・子育て手当で全国1位は360万円(第一子から)1,745市区町村調べ2024年

出産祝い・子育て支援金 市区町村独自支援 第一子で条件なし
    独自支援額 制度開始
1 福島県 葛尾村 3,600,000円 2020年
2 岡山県 吉備中央町 1,000,000円 2021年
3 福井県 池田町 920,000円 2015年
4 群馬県 下仁田町 900,000円 2023年
5 高知県 馬路村 680,000円 2023年
6 長野県 北相木村 650,000円 2023年
7 福島県 飯舘村 600,000円 2023年
8 新潟県 出雲崎町 570,000円 2022年
9 岩手県 九戸村 504,000円 2022年
10 岩手県 八幡平市 500,000円 2022年

 

前回の記事で韓国の市町村では、出産に対して1億ウォン(1,100万円)以上出す市町村が3ヵ所あるのが分かり、日本の市区町村はどうなのか、全国47都道府県の1,745市区町村のホームページを調べてみました。

 

2024年現在では、出産にあたり国から50万円の出産一時金が貰えます。それに加えて、出産祝い5万円、子育て支援5万円も国から市区町村を経由して貰うことができるので、計60万円を出産時に受け取ることができます。これは「国」の財源で福祉の部分ですが、最近市区町村では「独自の支援金」を市区町村の財源から捻出することで少子化対策、人口減少対策としてプラスアルファで支援するところが増えております。

 

出産・子育て支援金の支給条件が、市区町村で異なることが多く、この記事では「第一子から無条件」を基準として金額の多いところを紹介していきます。

 

 

福島県 葛尾村 360万円】

 

葛尾村みらい子ども 助成金交付事業

1ヶ月あたり2万円を15歳までに支給するという支援で、計算すると2万円×12ヶ月×15年=360万円 になります。

 

福島県葛尾村は、2011年の東日本大震災では、福島第一原子力発電所の事故により全村避難を余儀なくされ人口が一時「0人」なった村です。2023年時点で住民基本台帳では1,305人の人口ですが、村に帰ってきているのは326人です。

 

 

岡山県 吉備中央町 100万円】

 

 

www.youtube.com

岡山県吉備中央町では、子育て支援に100万円を配布する広報として、パロディーとしてYoutubeで町長が子供に100万円配って逮捕されたという動画が人気になりテレビでも紹介されました。

 

 

福井県 池田町 92万円】

 

 

福井県池田町では、独自支援金として「出産時に20万円」とママがんばる手当として0歳から3歳まで月額2万円が支給されます。(池田町で利用できる商品券)

20万円(出産時)+72万円(子育て支援)=92万円が独自で池田町から支援されます。

 

福井県池田町 人口比(5年前)

国勢調査(5年おき)による福井県池田町の人口減少率(5年前比)のグラフを見ると2005年は-9.4%、2010年は-10.5%、2015年は-13.4%でしたが2020年は-8.2%と人口減少の底打ちしたようにも見えるのは2015年から開始した92万円の出生対策が功を奏しているのかもしれません。

 

 

群馬県 下仁田町 90万円】

 

 

群馬県下仁田町では、出産時に30万円、1歳から5歳までの4年間でトータル48万円、小学校入学・中学校入学で20万円と、合計で100万円の出産・子育て支援になります。10万円は国からの財政なので、90万円が群馬県下仁田町の独自の支援金になります。

 

5歳まで毎年10万円の育児支援金 他支援と合わせ計100万円支給 群馬・下仁田町 移住奨励金も新設 | 上毛新聞社のニュースサイト

 

 

【企業としては、タカラトミーが出産で200万円支給】

www.itmedia.co.jp

前回の記事で韓国の大手企業が出産に1億ウォン支援を始めたと書きましたが、日本でも2024年7月からタカラトミーが200万円の支援策を発表しました。第三子以降とかの条件もなく第一子目から200万円は破格な支援金になります。

 

恐らく今後は競い合うように出生に対して福祉ではなく、出生の価値として対価を支払う価格の自由競争が生まれる新しい社会になるのではないでしょうか。

今までの社会では、第三者が福祉でなく価値として出生した家族に対価を支払うということはなかったと思います。

 

 

韓国の出生数(月次)が8年ぶりに下げ止まった理由は1人出生に1億ウォン支給か

韓国の出生数(月次の前年同月差) 2015年11月から2024年6月

 

韓国統計庁の出生数の月次を見ますと、2024年4月と2024年5月の2ヶ月連続で前年同月比でプラスになってました。2015年11月以来なので、8年5か月ぶりの出生数の下げ止まりになります。前回の記事で、日本も韓国も中国も台湾も出生数は下げ止まらないのではと書いたのもあり、何故韓国の出生数が下げ止まったか調べてみました。

 

【日本・韓国・台湾の出生数の推移の比較】

日本・韓国・台湾の出生数の推移 2017年7月は100%とした場合の7年間

2017年7月から2024年6月までの7年間の出生数の月次(過去12ヶ月平均)の推移で、2017年7月を100%とした場合の、日本・韓国・台湾の出生数の減少を比較すると、韓国、台湾、日本の順番で出生数の減少が厳しいのが分かります。中国の出生統計は月次がなかったので3つの国になりました。韓国は2017年7月と比較して2024年6月は約60%、台湾は66%、日本は74%という7年間の変化になります。

 

韓国が2ヶ月連続で前年同月で上回ったというのは、日本では2015年6月以降に1度も起きてない事象なので、偶然2ヶ月連続で回復したのではなく韓国で何かが起きたと思い調べてみました。

 

 

【韓国の婚姻数が17%も増加】

news.yahoo.co.jp

韓国で出生数が下げ止まった理由として、婚姻数が17%増加したことがあります。婚姻数の増加の理由を調べると、韓国政府ではなく各地方自治体の結婚・出産支援金が多数始まったことです。いくつか例を挙げますと下記のものがあります。

 

仁川市では、子どもが産まれたら、18歳までに1億ウォンを支給する

 

慶尚南道居昌郡(キョンサンナムド・コチャングン)は出生児1人当たり1億1千万ウォン支給

 

忠清北道永同郡(チョンチョンプクト・ヨンドングン)は最大1億2400万ウォン支給

 

釜山市では結婚式には2,000万ウォン支給

 

ソウル市では結婚式に100万ウォン支給

 

仁川市では、1カ月に約3万ウォンで借りられる住宅を1,000軒用意する

 

富栄グループ(企業)2021年以降に子どもが生まれた社員を対象に、子ども1人につき1億ウォンを支給

 

※ 1ウォン=0.11円 2024年9月現在

 

2021年以降に各自治体が人口減少に危機感を感じて、若者の移住や結婚の促進や出生に対する支援金の額を「1億ウォン(1,100万円)」出す自治体や企業が現れました。

1億ウォンは子供が18歳になるまでに段階的に支給するものですが、世界中を見渡しても桁違いの大きな金額になります。日本では地方自治体が独自で出産支援金として出しているところがありますが10万円なので、それと比較すると韓国の自治体は100倍の金額を出生に投資するという大きな転換点を迎えたように思えます。

 

韓国で行われている結婚支援政策

https://japanese.korea.net/NewsFocus/Society/view?articleId=257195

「1億ウォン現金支給」少子化政策、効果を考えて長期的な対策を立てなければ | 東亜日報

 

 

【ソウル市(900万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

ソウル市と仁川市の人口推移(外国人除く)

仁川市の1億ウォン支給「1億プラス・アイ・ドリーム」によって、人口が自治体で奪い合いになっているのかを韓国統計庁からグラフにしてみました。オレンジの線がソウル市(右軸)で、コロナ前の2019年と比較して5年間で韓国人が96%に減少しております。仁川市は2019年と比較して102%と人口が増加しております。

 

 

【釜山市(300万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

釜山市と仁川市の人口推移(外国人除く)

釜山市でも結婚・出産支援として下記のものがあります。

釜山市ではカップルになったら50万ウォン
釜山市では両家の顔合わせに各100万ウォン
釜山市では結婚式には2000万ウォン
釜山市では新居の家賃を月額80万ウォンを5年
釜山市ではチョンセという賃貸の保証金制度に3,000万ウォン

それでも人口は下げ止まらないのは、1億ウォンという金額と比較してしまうと移住に魅力を感じなくなるのでしょうか。

 

 

大邱(テグ)市(200万人)と仁川市(300万人)の人口の推移】

テグ市と仁川市の人口推移(外国人除く)

韓国の市の人口(外国人を除く)のランキングは、1位がソウルで930万人、2位が釜山市で320万人、3位が仁川市で300万人、4位が大邱(テグ)市で230万人です。1位から4位まで比較すると、仁川市だけが人口が増加していることになります。

 

韓国政府の市の人口統計:https://jumin.mois.go.kr/

 

 

【日本の地方自治体でも出生にお金を出し始める】

横浜市のHPで、2024年10月から「独自の出産費用助成金9万円」が始まります。

出産費用助成金(令和6年10月 申請スタート) 横浜市

 

 

【日本の100万人都市の日本人の増減比較】

2019年と2024年の日本人増加率(100万人以上都市)

2019年と2024年の5年間で日本人人口が増えた100万人以上の都市は、福岡市・さいたま市川崎市・東京23区・大阪市です。

2019年から2024年の5年間で日本人人口が減少した100万人以上の市は、京都市・神戸市・広島市名古屋市仙台市横浜市です。

  増減
福岡市 102.9%
さいたま市 102.4%
川崎市 100.9%
東京23区 100.9%
大阪市 100.4%
横浜市 99.9%
仙台市 99.9%
札幌市 99.7%
名古屋市 99.6%
広島市 98.0%
神戸市 96.8%
京都市 96.8%

 

 

【人口減少の危機感は地方自治体から始まっている】

韓国では、仁川市が出生に1億ウォンと発表した後に、別の市が1億1千万ウォン、次に1億2400万ウォンと、出生に対する地方自治体の需要が自由競争となっています。金額が世界的にも破格なのが韓国の切実さを物語っていて、今後どうなるか、日本の地方自治体も参考にするのではないでしょうか。

日本の出生数は、毎年35,400人ずつ減少して21年後の2045年には出生数がゼロになる可能性

日本の出生数過去1年の月次 2016年3月~2024年6月

厚生労働省が毎月公表している統計で、「当月を含む過去1年間の出生数」を月次でグラフにしてみました。8年間のグラフですが、綺麗にマイナスの一次関数になっています。近似曲線の傾きは「-2954.4」で出生数が毎月2,954人ずつ減少し年間では35,400人減少する直線となっております。(青線が実数で、赤点線が近似曲線)

2016年6月の過去1年間の出生数は1,027,120人でしたが、2024年6月は737,653人で8年間で29万人の減少になっております。

 

 

日本の出生数 将来予測 2016年~2045年

2016年~2024年の8年間が毎年35,400人ずつ出生数が減少していて、これが将来も続くと仮定すると計算上は21年後の2045年4月に日本の出生数はゼロになります。

「出生数が直線的に減少するはずがない」というのは根拠があるのでしょうか?

 

 

厚生労働省の2015年の人口予測と実数値】

厚労省の将来推計人口(出生低位)と実績値 2017年発表

厚労省の管轄の国立社会保障・人口問題研究所が2017年に発表したもの(予測は2015年時にされたと思われる)と、2024年までの実績値をグラフにして比較しました。将来推計人口は「出生高位」「出生中位」「出生低位」と3パターンを想定して予測されます。2024年の「出生低位」(最悪のパターン)の予測値は723,000人となってますが、2024年6月時点で2024年の出生数を推計すると720,000人以下になる可能性が高いです。

 

国立社会保障・人口問題研究所の出生数の将来予測(2015年時点)では2025年からは3,000人ずつしか減少しない予測になっていて、出生数の減少が底打ちするとされています。何故、出生数の減少に歯止めが掛かるのか理由は見つけれませんでした。

 

日本の将来推計人口(平成29年推計)

https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_ReportALL.pdf

 

 

厚生労働省の2020年の人口予測】

厚労省の将来推計人口(出生低位)と実績値 2020年

厚労省の管轄の国立社会保障・人口問題研究所が2021年に発表した最新の将来推計人口(出生低位)と実績値のグラフです。この予測は2020年に行われていて新型コロナウィルスの影響を考慮にいれたものになります。「出生低位」「出生中位」「出生高位」のどのパターンでも、2024年には出生数が増加すると予測されています。しかし実際は2024年上半期の出生数は2023年上半期と比較して「-5.7%」です。

 

厚労省の出生数の予測では2024年に増加に転じて、以降は減少は緩やかで底打ちするとなっていますが、上記のグラフの赤い線が実績値ですが、この落下角度が緩やかになる根拠が分からないのです。

 

日本の将来推計人口(令和5年推計)

https://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2023/pp2023_ReportALLc.pdf

 

 

【韓国の出生数も減少が激しく11年後に出生数がゼロになるペース】

韓国の出生数 将来予測

韓国の2023年の出生数は230,000人です。2015年は438,400人だった韓国の出生数は僅か8年で20万人減少でマイナス48%になります。将来このまま出生数が減少すると仮定すると2035年には出生数がゼロになる計算です。

 

 

【中国の出生数も減少が激しく12年後に出生数がゼロになるペース】

中国の出生数 将来予測

中国の2023年の出生数は9,020,000人です。2017年には17,230,000人だった出生数が6年で8,200,000人減少しマイナス48%減ということになります。このまま減少が続くと2036年には中国の出生数はゼロになる計算です。

 

日本も韓国も中国も、コロナ禍で出生数が減少したというグラフにはなってないのが特徴的で、コロナ禍で出生数が減少した訳ではないので、出生数が今後下げ止まる理由が見当たらないと思います。

詐欺の被害認知件数が2024年7月が過去最多5,184件/月

詐欺の被害認知件数 月間(警察庁

詐欺の月間認知件数(直近2年)

2022/7 2,646
2022/8 3,463
2022/9 3,518
2022/10 3,607
2022/11 3,823
2022/12 4,561
2023/1 3,170
2023/2 3,350
2023/3 3,907
2023/4 3,452
2023/5 3,644
2023/6 3,811
2023/7 3,619
2023/8 3,949
2023/9 4,024
2023/10 4,242
2023/11 4,264
2023/12 4,579
2024/1 3,577
2024/2 3,573
2024/3 5,065
2024/4 5,030
2024/5 5,081
2024/6 4,869
2024/7 5,184

犯罪統計 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

 

警察庁が毎月統計で公開している「犯罪統計」で「詐欺」の項目の被害認知件数をグラフにしました。詐欺の月間の被害認知件数は2024年7月は5184件で過去最多となってしまってます。

SNS型投資詐欺がメディアで注目され逮捕者も多く、詐欺の抑制になっているように見えても、未だに被害認知件数は増加している状況です。2023年が詐欺の被害額が1625億円で過去最多でしたが、2024年はそれを上回る可能性が高くなっています。

 

jinkougenshou.com

 

【現職の警察官もSNS型投資詐欺で被害にあった】

兵庫県警の本部警備部の40代男性警察官が、2024年6月に870万円のSNS型投資詐欺に遭いました。特殊詐欺・SNS型投資詐欺合わせて、兵庫県警の警察官が被害に遭うのは「初」とのこと。

兵庫県警の巡査部長「手口にうとかった」SNS型投資詐欺で870万円被害 送金のため740万円借金し注意処分|社会|神戸新聞NEXT

 

現職の40代の警察官でもSNS型投資詐欺に騙されてしまうのかと意外に思い、詐欺の被害者の年代別で直近のデータを整理してみました。

 

 

【2024年の詐欺被害が多いのは60代で次が20代】

詐欺の被害の率(10万人当たり) 年代別 2024年

犯罪統計で、詐欺の被害に遭った年代別人数を人口で割って、10万人当たりの詐欺被害の月間人数を直近12ヶ月をグラフにしました。60代が2024年7月で4.9人/10万人当たりで一番詐欺の被害率が多い年代です。次に多いのが意外ですが20代で、一番被害が少ないのは70代で3.6人/10万人当たりです。

詐欺被害に遭う方は70代が一番多いと思っていたのですが、恐らく70代以上だとSNSを利用しないので低いのかもしれません。

 

 

【詐欺の検挙人員は減少してしまっている】

詐欺の検挙人員 各年1~7月

警察庁の犯罪統計で、各年で1~7月の詐欺の検挙人員を過去4年間で比較すると2024年が一番少ない状況です。被害認知件数が一番多いのに検挙人数が一番少ないのが詐欺の手口の巧妙さが増しているのを物語っています。

  検挙人数
2021年1~7月 5,398人
2022年1~7月 5,646人
2023年1~7月 5,314人
2024年1~7月 4,942人

 

 

通勤時間が長いOECD上位国(韓国・中国・日本)は出生率が低い

男性の通勤時間(分) OECD 2009年

 

OECDの通勤時間に関する各国のデータを見ていて、韓国と中国の男性の通勤時間がOECD29ヵ国データで1位・2位で日本が4位だったので出生率と通勤時間に相関があるのかを調べようと思いました。通勤時間の世界比較のデータが少なく、上記のOECDのも2009年のデータで少し古いので日本国内のデータを調べていきます。

 

 

【通勤時間と少子化が相関する?】

2022年に内閣府の「少子化対策出生率に関する研究」で下記のように言及しております。

夫の労働時間との関係では有意な関係がみられないが、夫の通勤時間が長いと出生率を引き下げるという結果が多くなっている。

https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/e_rnote/e_rnote070/e_rnote066_01.pdf

 

財務省少子化対策として、第二子出生と通勤時間に関する資料を発表しております。

通勤時間が1時間増えることは、第2子出生確率が25%減少する

 

通勤時間が短いエリアでも、家賃が高いと乳児の割合が下がる傾向にある。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou202103_06.pdf

 

内閣府財務省の資料も「通勤時間」と「出生率の低下」は相関はするが、因果関係や理由は不明だとのことです。

 

 

【東京圏の平均通勤時間は往復で100分】

通勤時間(分) 2020年 国民生活時間調査

国民生活時間調査で、2020年の都市規模別で通勤時間を比較すると、人口の多い街ほど通勤時間が長くなっているのが分かります。東京圏の通勤時間が平均で100分という2020年のデータは、通勤をしている人の往復時間の平均になりますので、通勤をしてない人は平均値の計算に含まれません。

国民生活時間調査|NHK放送文化研究所

 

 

【全国30代男性の25年間の通勤時間の推移】

30代男性の通勤時間(分) 国民生活時間調査

国民生活時間調査で年齢別・性別で通勤時間が最も長いのは30代男性になります。

1995年:80分

2000年:78分

2005年:79分

2010年:77分

2015年:87分

2020年:92分

2010年までは通勤時間の平均(通勤実施者)が80分前後だったのが2020年には92分と増加しております。通勤時間の増加は全国民全体でも2010年以降に増加しております。前述のOECDデータで日本は通勤時間が50分とありますが、2010年の国民生活時間調査で通勤時間の標準偏差という値が53分であるので、OECDの平均値は標準偏差の値だと思われます。

 

 

【ソウルの会社員は通勤に1時間36分】

2018年の記事で、ソウルでも通勤時の道路が混雑して年々通勤時間が長くなっているというのが下記の記事です。

ソウルの会社員は通勤に1時間36分、全国最長 | 東亜日報

 

 

アメリカも年々通勤時間が増加して、大都市部ほど通勤時間が長い】

上記のグラフは、アメリカのデータで片道の通勤時間になります。日本の30代男性の通勤時間と類似して2010年から増加し始めてます。アメリカでは500万人以上の都市では通勤時間が片道で33分、30万人以下だと22分となっております。

 

 

福井市

福井市は47ある都道府県庁所在地の中で最も合計特殊出生率が高く、通勤時間が短い。福井市では往復の通勤時間が30分未満の割合が75%と高くなっています。

 

前述の財務省の資料では下記のように言及しております。

都市部に限ると全てのコーホートにおいて配偶者の通勤時間が 10 分増加することにより、第二子出生が 4%抑制されることが示唆された。

 

延床面積が 1 平米増加することにより、第二子出生を 3%促進し、完結出生児数を増やす影響があることが示唆された

 

 

【東京都に住む25~29歳の割合が年々増加】

東京都に住む25~29歳(日本人)の割合

25~29歳の日本人が東京都に住んでいる割合をグラフにしました。2024年は25~29歳の15.2%が東京都に住んでいて、2014年の13%から右肩上がりに上昇を続けてます。若者が東京圏に住む割合が増加するということは、通勤時間の平均が上昇して出生率の低下も相関してくることになります。

 

東京都に住む25~29歳(日本人)の割合 青線:男性 赤線:女性

2024年では25~29歳の男女が東京都に住んでいる割合は15.2%で同じになっています。2008年に1.1%の男女差がありましたが、女性が東京都に進出する人が増えて追いついた状況です。25~29歳女性が東京都に住む率が増加している背景としては、女性の四年生大学の進学率がこの20年間で2倍になったのが大きな要因と思われます。

人工妊娠中絶が禁止されている国は出生数が多い

【アフリカ54ヵ国 出生数が2023年も増加している国】

青の上矢印の国は、2023年時点で出生数がその国の過去最多で増加し続けている国です。赤い下矢印の国は、出生数が減少に向かっている国です。アフリカ54ヵ国では、出生数の増加国は39ヵ国/54ヵ国 、出生数が減少している国は15ヵ国です。

アフリカ54か国で、人工妊娠中絶を「経済的理由や母親の意志」で自由に合法的に選択できる国は、5ヵ国です。(南アフリカモザンビークチュニジア、カーボヴェルデ、サントメ・プリンシペ

人工妊娠中絶が合法の国で、出生数が増加している国は、アフリカではモザンビークの1国だけになります。

 

各国が人工妊娠中絶を合法にしているか否かは下記のwikipediaを参照しています。

人工妊娠中絶法 - Wikipedia

 

 

【中東 出生数が2023年も増加している国】

 

中東の国で2023年も出生数が増加している国は、5か国になります。

ウズベキスタン

アフガニスタン

パキスタン

・イエメン

カタール

この内、人工妊娠中絶が経済的な理由や母親の意志で合法に選択できるのは、ウズベキスタンの1国だけになります。

出生数が2023年で増加しているのは、アフリカの39ヵ国と中東の5ヵ国のみになります。

 

 

【ヨーロッパの国 出生数がピークだった年】

 

ヨーロッパでは出生数が2023年時点で増加している国はありません。出生数がピークだった年を国連のデータからマップにしました。1963年、1964年がピークだった国がイギリス、オランダ、ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、ベルギーと多く目立ちます。

1960年にフランスで「フランス家族計画運動」という中絶の合法化を求める運動が盛んになったり、イギリスでも1960年にAbortion Law Reform Association (ALRA)という中絶法の改正を求めるキャンペーンを強化し1967年に合法化されました。

ヨーロッパでは1960年代に中絶の合法化が盛んになり、出生数がピークを迎えたということになります。

 

ヨーロッパの国(人口100万人以上)で中絶が違法とされているのはポーランドです。カトリック教会の影響が強い国で、2020年10月にポーランド憲法裁判所が中絶は違憲であると判断しました。

ポーランド、人工妊娠中絶がほぼ全面禁止に 首都で抗議のデモ - CNN.co.jp

 

 

【アジアの国 出生数がピークだった年】

 

緑の丸枠の国は、人工妊娠中絶が「経済的理由や母親の意志」で選択できる国です。赤い数字は、出生数がピークだった年になります。人工妊娠中絶が許されてないフィリピン、マレーシア、スリランカバングラデシュは出生数のピークが2000年以降とアジアの中で比較的遅かったのを見ても、人工妊娠中絶が出生数に大きく影響していることがうかがえます。

 

 

【日本の人工妊娠中絶と出生数の関係】

日本の出生数と中絶数の関係 1949年~1970年

何故、日本の第一次ベビーブームが終焉したのかという疑問を調べてみたら、人工妊娠中絶の導入だったと知って、今回の記事を調べてみようと思いました。

 

日本では明治後期から中絶や間引きを法律で禁止することで、富国強兵へと繋げてました。敗戦後に日本の飢餓状態や住宅難状態を考慮して1948年に母体保護法優生保護法が成立して人工妊娠中絶が以降急増しました。

 

下記の記事にある通り、もし人工妊娠中絶が導入されずにいた場合の出生数は1974年まで出生数は毎年270万人前後で減らずに維持した計算になります。

www.sankei.com

世界の中絶数の統計を調べてみると、1950年代に年間100万件を超える人工妊娠中絶が起きたのは日本だけでした。日本が人口減少の先駆けと言われる所以は1948年の優生保護法が他国よりも早かったからなのでしょう。

 

【使用した出生数 国連データ】

World Population Prospects - Population Division - United Nations

日本人の人口移動(引越し)は2024年が戦後では過去最少

日本人の移動者(市町村間以上)の推移 1954年~2024年

ソース:統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果

第2表 男女別移動者数、都道府県内移動者数及び都道府県間移動者数の推移-全国(移動者(日本人及び外国人)、日本人移動者)、外国人移動者)(1954年~2023年)

 

日本人に限定した、国内での引っ越し件数を調べたところ1973年の853万人をピークにその後下落して2024年が456万人と半減していることが分かりました。

1954年以降の統計では日本人の移動者数は2020年が1956年以来の低い数字になり、その後も下落は続いて、2024年は更に減少しています。

 

今回調べるきっかけとなったのは、2024年に不動産仲介の業界が厳しい局面を迎えている理由として、消費者が引っ越しをしなくなっていると聞いたのでグラフにしてみました。

 

 

アメリカも引っ越し人数の割合は2023年は人口の7.8%で統計開始の1948年過去最少】

Number of Movers and Mover rate 1948~2021

黒い線が「Mover rate」という人口当たりの移動率で、2023年は過去最少になっています。青い縦棒が移動者の実数ですが移動者も過去最少になっています。

U.S. Migration Continued to Decline From 2020 to 2021

 

 

【韓国も移動率が減少して2022年は12%】

全国の移動者数615万2000人に減少 | グラフで見る韓国経済 | ニュース | 東洋経済日報

 

 

【人口を考慮した日本人の移動率の長期推移】

日本人の移動率(引越)の割合 1955年~2024年

日本人の人口が減少したことで移動数が減ったのではなく、移動率自体が減少して半減しています。1973年に移動者の伸びが止まったのは、地方と東京の賃金格差が1.3倍以下になった為です。地方と東京の賃金格差は1950年代では2倍近くあり、多くの農村の人が東京に移住し人材の需給のバランスが1.3倍になったところで止まったと以前に論文を見たことがあります。

移動率が減少したもう1つの要因としては移動率が高い若年層(20代)の割合が減少したこともあります。

 

 

【日本人の 都道府県内移動 と 都道府県間移動】

日本人の都道府県内移動率と都道府県間移動率 (各年の上半期)

統計では、移動者は「都道府県内」or「都道府県間」であるかを知ることができます。2024年の1~6月のデータを過去と照らし合わせるのに、2015年~2024年の「1~6月」のデータを比較してみました。

赤線が都道府県内の日本人の移動率(各年の上半期)で年々下がってきているのが分かります。対して都道府県を跨ぐ日本人の移動率は大きくは変動してないのが特徴です。2014年より前の移動数は、統計で日本人と外国人を分けたものが見当たらなかったので2015年から2024年の上半期のグラフになります。

 

 

【日本に住む外国人の移動率は日本人の4.5倍】

2024年1~6月の移動率(日本人と外国人)

2024年の1月~6月までの日本人と外国人の移動数に、日本人口と外国人人口を割ったものを比較しました。移動率は日本人が、半年で2.24%で、外国人が半年で10.29%。年間で換算すると、日本に住む外国人の移動率は約20%になり、1年間に5人に1人は引っ越すということになります。後述しますが、日本人で年間の移動率が20%を超えているのは「22歳」だけになります。

 

 

【日本人の年間の移動率 年齢別】

年齢別の年間移動率 2023年

統計局ホームページ/住民基本台帳人口移動報告 2023年(令和5年)結果 (移動率)

 

2023年の日本人の移動率18歳が11%、22歳が22.6%でピークとなり、45歳で2.9%、57歳で2%以下になります。

 

 

【人口流動の減少と人口減少はリンクしている】

日本の人口の歴史で、人口爆発があったのは、1600年~1700年と1895年~1950年で、2つの共通点は人間の移動が多かったことだと思います。1600年に江戸幕府が誕生し、江戸に100万人の移住者が発生したり、外様大名の移動があり人口が流動した時期であります。1895年は日清戦争が始まり台湾を併合し朝鮮も併合して大日本帝国が拡大して、人口の流動が活発になり終戦の引き揚げ時も人口流動が発生しました。
ホモサピエンスの長い歴史を見ると、人は流動することで生物学的に発展してきたように思います。