児童虐待又はその疑いがあるとして警察から児童相談所に通告した児童数は、過去最多でした。2011年の11,536人から12年後には10倍以上の122,806人に増加しております。
令和5年の犯罪情勢警察庁(15ページ)
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/crime/situation/r5_report.pdf
児童福祉法では、「児童虐待を発見した者は、児童相談所に通告する義務がある」となっています。2004年から、「児童虐待を受けた者」が修正され「児童虐待の可能性がある者」になり、警察から児童相談所への通告が年々増加しております。
朝日新聞の記事では、警察による児童虐待の通告が増加している理由は、家庭内暴力(DV)で夫婦喧嘩であったとしても子供が居合わせたら児童相談所に警察が通告するようになった為とのことです。
【一時保護された児童数の率は過去最高】
1年間で18歳未満人口の内、何%の児童が一時保護になっているかの推移のグラフになります。
2011年 | 0.15% |
2012年 | 0.16% |
2013年 | 0.17% |
2014年 | 0.18% |
2015年 | 0.19% |
2016年 | 0.21% |
2017年 | 0.22% |
2018年 | 0.25% |
2019年 | 0.28% |
2020年 | 0.27% |
2021年 | 0.30% |
児童相談所は通告を受けた後に、必要に応じて「一時保護」という手段を取ります。
一時保護は、虐待の可能性があると児童相談所が判断した場合は保護者の許可を得なくても児童相談所一時保護所に1日から2ヶ月まで親子分離することができます。
一時保護をした児童数は2021年で49,983人で、18歳未満人口が16,936,000人なので、年間では0.3%の児童が一時保護になった計算になり、これは過去最高の数字になります。
一時保護の統計では、両親ともに一時保護を児童相談所に許諾したケースは約83%となっております。
児童相談所が一時保護した児童数の推移
https://www.soumu.go.jp/main_content/000723064.pdf
【他国との児童虐待の通告の比較】
国別の児童虐待の警察による通告数を児童1,000人当たりで比較してみました。
韓国 | 5.1人 |
日本 | 6.9人 |
オーストラリア | 8.8人 |
アメリカ | 28.9人 |
アメリカ | 数字で見る、世界各国の児童虐待の対応の状況| 研究 | 子どもの虹情報研修センター
直近10年で日本の児童虐待の通告数が10倍になってますが、他国と比較して多すぎる数字ではないのが分かります。アメリカの児童虐待の通告が多いのは、法律の基準が厳しく13未満の子供を留守番させただけで児童虐待となってしまう為でもあります。
アメリカも韓国も直近10年で児童虐待の通報が2倍に増加しており、世界中で児童保護が加速してます。
2023年10月に埼玉県の自民党議員が、小学3年生以下を留守番・外出させる行為は児童虐待に当たるという埼玉県虐待禁止条例改正案を可決させたところ、猛反対の苦情が殺到し法案が急遽取り下げられました。
【児童虐待の検挙件数は過去最多】
児童虐待による警察の検挙件数の推移を見ますと2012年は331件でしたが、2023年は1,509件と4.5倍に増加してます。2023年1,509件は児童虐待の検挙件数としては過去最多になります。警察の検挙なので、基準は昔も今も変わらないのを考慮すると、以前は見過ごされてた児童虐待が表面化してきたとも考えられます。
12歳以下の児童虐待による検挙件数
2012年 | 331 |
2013年 | 333 |
2014年 | 456 |
2015年 | 546 |
2016年 | 613 |
2017年 | 597 |
2018年 | 830 |
2019年 | 1,299 |
2020年 | 1,435 |
2021年 | 1,375 |
2022年 | 1,367 |
2023年 | 1,509 |
【児童養護施設の児童の障害が増加している】
児童虐待で一時保護所に滞在した後に、約52%の児童は自宅に帰宅となりますが、22%から48%の児童は児童養護施設等に入所になります。22%から48%と幅が大きいのは、一時保護所の後に裁判が行われるケースや、他の地域の一時保護所に行くケースもあるので統計として正確な数字が発表されてません。里親、児童養護施設、児童心理治療施設、児童自立支援施設、乳児院、母子生活支援施設、ファミリーホーム、自立援助ホームという名称になります。
児童養護施設等の障害のある児童の割合の推移
1998年 | 11.7% |
2003年 | 20.2% |
2008年 | 24.2% |
2013年 | 28.4% |
2018年 | 36.2% |
2023年 | 41.4% |
児童養護施設等に入所する児童の障害有の割合は1998年が11.7%でしたが2023年は41.6%と3.5倍になってます。2023年の子ども家庭庁の統計で、児童養護施設等に入所している児童の41.6%が「知的障害」「ADHD」「自閉症」などの障害のある児童でした。背景としては、子供の自閉症やADHDに気付くようになったことにあります。
【児童養護施設の児童の障害の有無】
2023年の児童養護施設等に入所している児童の障害の有無と傷病名のグラフになります。障害なしが59%、ADHDが13%、自閉症スペクトラム症候群が13%、知的障害が12%、その他障害が3%になります。増加している傷病は「ADHD」と「自閉症スペクトラム」で15年前と比較して、児童養護施設等に入所している児童が4倍以上になっております。増加しているというよりは、15年前はADHDや自閉症の診断を児童が受ける機会が少なかったのが、最近は増えてきたのが要因かと思われます。
人数 | 割合 | |
全体 | 41,182 | |
障害なし | 24,121 | 59% |
ADHD | 5,462 | 13% |
自閉症 | 5,341 | 13% |
知的障害 | 5,010 | 12% |
その他障害 | 1,248 | 3% |
【一時保護中に通学できるている小中学生は6%】
一時保護中に通学できるかどうかは、児童の安全性を考慮して児童養護施設等が判断してます。毎日新聞が独自調査したところ、義務教育の小中学生で通学できているのは6%とのことでした。また、「通学したいかどうか意向を原則確認しているのは、児相を持つ78自治体のうち約3割の24自治体」とのことでした。
児童虐待の恐れから一時保護になり、通学できなくなり不登校へとなってしまっている危険性もあります。
【警察による児童虐待の通告数のデータ】
2004 | 962 |
2005 | 1,189 |
2006 | 1,703 |
2007 | 3,516 |
2008 | 6,066 |
2009 | 6,277 |
2010 | 9,038 |
2011 | 11,536 |
2012 | 16,387 |
2013 | 21,603 |
2014 | 28,923 |
2015 | 37,020 |
2016 | 54,227 |
2017 | 65,431 |
2018 | 80,252 |
2019 | 98,222 |
2020 | 106,991 |
2021 | 108,059 |
2022 | 115,762 |
2023 | 122,806 |