人口減少時代をグラフで読み解く

人口減少の時代に起きる様々なことをグラフにして考察

コンパクトシティの人口密度「上がった2市と失敗した12市」

コンパクトシティで居住誘導区域の人口密度の変化 2015年⇒2020年の5年

コンパクトシティを公表してる居住誘導区域の人口密度(人/ha)の変化

  2015年 2020年 増減率
茨木市 107.9 111.6 103.4%
花巻市 36.8 37 101%
熊本市 60.7 60.2 99.2%
田原本町 56 55 98%
青森市 52.4 51.3 97.9%
鹿児島市 73.5 71.5 97.3%
前橋市 42.9 41.7 97%
宇都宮市 66 64 97%
高松市 46.4 44.9 97%
弘前市 47.7 45.8 96%
大牟田市 47.1 44.7 95%
多治見市 46 42.9 93%
小諸市 30 27.9 93%
上越市 73.4 63.7 87%

上越市、多治見市、鹿児島市は、2010年と2020年の比較になってしまってます。

 

コンパクトシティ推進は国土交通省が、人口減少に伴う都市開発として各市町村に促している計画で2017年からデータが公表されるようになりました。2023年では500以上の市町村で立地適正化計画を公表してますが、5年間の人口密度が上昇したか減少したかを正確に公表している市町村は少なく、上記の14市町村しか見つけれませんでした。

国土交通省資料

https://www.mlit.go.jp/toshi/city_plan/content/001631622.pdf

 

【居住誘導区域への人口集約】

居住誘導区域とは、市が地域を公表して人口密度を上げていく地域です。市町村が策定して都市開発をする主な理由は下記になります。

・特定地域に人口密度を多くすることで、地価の上昇や経済の流通を促す
・特定地域に移住することで、移動が困難な高齢者でも快適な生活を送ることができる
・特定地域以外の人口の比率を少なくすることで、市のコストを下げることができる
・立地適正化計画をすることで国から補助金が出る

 

今回の記事を作成した理由は、市が特定した地域に人口が思うように集約することは可能なのか?を検証したかった為です。市町村の立地適正化計画の発表のスタイルは自由なので、きちんと居住誘導区域の人口密度の変化を明示している所は少なかったです。人口密度がコンパクトシティとして集約されたかどうかを明示しない理由は下記になると思います。

・立地適正化計画を初めて5年経過してない。(5年というのは国勢調査の人口を参照している為です)
・居住誘導区域の面積を途中で変更している
・20年計画でコンパクトシティを構想しているようで、途中経過を検証してない

 

コンパクトシティ富山市

 

この記事を作成しようとした発端は、2024年の読売テレビニュースのこの部分で、富山市の居住誘導区域が2005年から2023年で11.8万人から16.3万人に増加したという成功例に疑問を持ったからです。良く調べてみると、富山市のサイトでは、平成31年3月に「居住誘導区域の面積を追加した」という変更履歴があります。富山市の居住誘導区域を増やせば、居住誘導区域の人口が増えるのは当然になります。居住誘導区域の人口密度に関しての記載は富山市ではありませんでした。

富山市立地適正化計画|富山市公式ウェブサイト

 

国土交通省の資料にも人口密度の結果はない】

国土交通省コンパクトシティ推進の資料には、360都市で251都市の66.1%で増加したとあります。「何が増加した」かというと、「居住誘導区域の人口÷市内人口」であり、居住誘導区域の人口密度とは異なり、裏技が使えてしまいます。裏技というのは、居住誘導区域の場所を増やし人口と面積を増やすことです。しかし、この裏技は人口密度が下がってしまうので、国土交通省も市町村も人口密度の結果を載せないところが多いです。人口密度は誤魔化しができないので、今回の記事のように14市町村だけの比較になりました。

 

www.yomiuri.co.jp

コンパクトシティ策定の見送りをした船橋市

2024年3月に船橋市は立地適正化計画を7年間してきたが実施は見送ると発表しました。理由が聡明で、「人口密度が100人/ha以上の市町村にはコンパクトシティは適さない」というものでした。船橋市の市街化区域の人口密度は下記のように上昇しているのでコンパクトシティにしない方が良いと判断されたようです。

船橋市の市街化区域の人口密度(人/ha)

 

茨木市の居住誘導区域の人口密度がアップしたのは元々100人/ha以上だから】

大阪府茨木市が2015年から2020年に掛けて107.9から11.6人/haに増加していますが、元々が人口密度の高い都市だからなのでしょう。茨木市全体の人口も102.9%上昇しているので、コンパクトシティが功を制したわけではないと思います。

人が移動する理由は2025年現在では、仕事で収入が増加する、大学入学、新卒の就職、資産増目的の不動産購入などです。どれも、「収入が上がるor資産が上がる」です。過去を見ても人の移動理由は「収入が上がる」なので、コンパクトシティでは失敗するのではと危惧してしまいます。