女性の場合,再生産年齢の終盤(45~49歳)における無子女性の割合を生涯無子率としてとらえることが多い。
国立社会保障・人口問題研究所
https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19750102_rev.pdf
生涯子供がいない女性の割合が日本が一番高い数値であることが今世界中で注目されております。
一般的に女性の生涯無子率は「45歳から49歳」までの女性だけを計測して何%の人が子供がいないかを調査するものです。
日本の長期の無子率は、戦前生まれの女性が10%、その後低くなって1940年代生まれの女性が一番生涯無子率が低くなり底を打ちました。
その後増加に転じて、グラフのように2010年の調査時(1960年~1965年生)の生涯無子率が17.7%になり、2022年(1972年~1977年生)では29.6%になりました。
2010年から3年間隔の統計をグラフ化したものは、生涯無子率が直線的に増加しているのが何かしらの社会的な要因があるからなのでしょう。
【OECD加盟国の生まれた年別の子供なし率のグラフ】
引用:https://www.oecd.org/els/family/SF_2-5-Childlessness.pdf
横軸の年は生まれた年で、縦軸が子供なし率です。
一番目の画像の青線が日本で、他国と比べて上に突き抜けてます。
生涯無子率は国によって「40~44歳」を調査したり、OECDの統計が存在しなかったりと統一感がなく比較が難しいです。
そこで各国の調査結果を「45~49歳」、「2022年調査」と仮定して個人判断で補正値にしてみて比較しやすいように目安としてグラフにしました。
日本の女性の生涯無子率29.6%は確かに世界一高い数字ですが、韓国やシンガポールやイタリアと比較して大きな差ではありません。
【過去に女性の30%の生涯無子率のデータはなかった】
男性の無子率が高いのは江戸時代などありましたが女性が30%になるのは、国単位では統計上見当たりませんでした。
1890年生まれの女性がドイツ・アメリカで生涯無子率が高かった記録が残されてます。
アメリカ女性で20%、ドイツは「ベルリン」の都市だけの調査ですが40%と高い数字だったようです。
第一次世界大戦の時期というのが原因も考えられますが、恐らく一番の要因は「子供の義務教育」が誕生したことだと思われます。
ドイツでは1900年に女性も学校に通わす義務が発生し、18歳未満を労働させないという罰則ありの法律も出来ました。
急に出来上がった法律に子供を持つことを躊躇した女性がドイツでは増加して、子供を持たない女性は田舎より都市が住みやすいのでベルリンに集中して40%という数字になったと思われます。
参照:https://www.ipss.go.jp/publication/e/jinkomon/pdf/16896601.pdf
【移民による生涯無子率の緩和】
欧米の国が生涯無子率が日本や韓国ほど高くなっていない理由は移民が多いからです。
移民する人は母国で子供を育てるのを辞めて、移民先の国で子孫を残そうとする出生に対する強い意思があるからだと思います。
2005年の調査ではドイツ女性の生涯無子率が20%でしたが、15年経過した2020年でも21%です。
補正値のグラフで上位の国、日本・韓国・イタリアは単一民族で、移民が少ないことで生涯無子率が高くなっていると思われます。
【アメリカやイギリスの人種別のデータが見つからない】
アメリカやイギリスやドイツの移民以外の人種で生涯無子率を調べたのですが比較できるデータが見つけられませんでした。
アメリカの白人の人口が2010年にピークを迎え減少に転じているので生涯無子率も高いのではと思ったからです。
アメリカの2020年のデータでは、「白人」「ヒスパニック系」「アジア人」「黒人」に分類して、独身女性の内で何%が子供がいないかという統計結果はあり、アジア人が子供なし率が高かったです。
恐らく先進国では移民を除くと女性の生涯無子率はどの国も20%以上になっているように思うのです。
【BirthGap ドキュメンタリー映画】
生涯無子率を調べてみようと思ったきっかけは、下記の映像が「BirthGap」というドキュメンタリー映画で使用されていたからです。
Birthgap - Childless World PART 1 (English Version) - YouTube
【子供のいない女性(45~49歳)の割合】
2010年 | 17.7% |
2013年 | 20.9% |
2016年 | 23.6% |
2019年 | 26.8% |
2022年 | 29.6% |