人口減少時代をグラフで読み解く

人口減少の時代に起きる様々なことをグラフにして考察

通勤時間が長いOECD上位国(韓国・中国・日本)は出生率が低い

男性の通勤時間(分) OECD 2009年

 

OECDの通勤時間に関する各国のデータを見ていて、韓国と中国の男性の通勤時間がOECD29ヵ国データで1位・2位で日本が4位だったので出生率と通勤時間に相関があるのかを調べようと思いました。通勤時間の世界比較のデータが少なく、上記のOECDのも2009年のデータで少し古いので日本国内のデータを調べていきます。

 

 

【通勤時間と少子化が相関する?】

2022年に内閣府の「少子化対策出生率に関する研究」で下記のように言及しております。

夫の労働時間との関係では有意な関係がみられないが、夫の通勤時間が長いと出生率を引き下げるという結果が多くなっている。

https://www.esri.cao.go.jp/jp/esri/archive/e_rnote/e_rnote070/e_rnote066_01.pdf

 

財務省少子化対策として、第二子出生と通勤時間に関する資料を発表しております。

通勤時間が1時間増えることは、第2子出生確率が25%減少する

 

通勤時間が短いエリアでも、家賃が高いと乳児の割合が下がる傾向にある。

https://www.mof.go.jp/pri/research/conference/fy2020/jinkou202103_06.pdf

 

内閣府財務省の資料も「通勤時間」と「出生率の低下」は相関はするが、因果関係や理由は不明だとのことです。

 

 

【東京圏の平均通勤時間は往復で100分】

通勤時間(分) 2020年 国民生活時間調査

国民生活時間調査で、2020年の都市規模別で通勤時間を比較すると、人口の多い街ほど通勤時間が長くなっているのが分かります。東京圏の通勤時間が平均で100分という2020年のデータは、通勤をしている人の往復時間の平均になりますので、通勤をしてない人は平均値の計算に含まれません。

国民生活時間調査|NHK放送文化研究所

 

 

【全国30代男性の25年間の通勤時間の推移】

30代男性の通勤時間(分) 国民生活時間調査

国民生活時間調査で年齢別・性別で通勤時間が最も長いのは30代男性になります。

1995年:80分

2000年:78分

2005年:79分

2010年:77分

2015年:87分

2020年:92分

2010年までは通勤時間の平均(通勤実施者)が80分前後だったのが2020年には92分と増加しております。通勤時間の増加は全国民全体でも2010年以降に増加しております。前述のOECDデータで日本は通勤時間が50分とありますが、2010年の国民生活時間調査で通勤時間の標準偏差という値が53分であるので、OECDの平均値は標準偏差の値だと思われます。

 

 

【ソウルの会社員は通勤に1時間36分】

2018年の記事で、ソウルでも通勤時の道路が混雑して年々通勤時間が長くなっているというのが下記の記事です。

ソウルの会社員は通勤に1時間36分、全国最長 | 東亜日報

 

 

アメリカも年々通勤時間が増加して、大都市部ほど通勤時間が長い】

上記のグラフは、アメリカのデータで片道の通勤時間になります。日本の30代男性の通勤時間と類似して2010年から増加し始めてます。アメリカでは500万人以上の都市では通勤時間が片道で33分、30万人以下だと22分となっております。

 

 

福井市

福井市は47ある都道府県庁所在地の中で最も合計特殊出生率が高く、通勤時間が短い。福井市では往復の通勤時間が30分未満の割合が75%と高くなっています。

 

前述の財務省の資料では下記のように言及しております。

都市部に限ると全てのコーホートにおいて配偶者の通勤時間が 10 分増加することにより、第二子出生が 4%抑制されることが示唆された。

 

延床面積が 1 平米増加することにより、第二子出生を 3%促進し、完結出生児数を増やす影響があることが示唆された

 

 

【東京都に住む25~29歳の割合が年々増加】

東京都に住む25~29歳(日本人)の割合

25~29歳の日本人が東京都に住んでいる割合をグラフにしました。2024年は25~29歳の15.2%が東京都に住んでいて、2014年の13%から右肩上がりに上昇を続けてます。若者が東京圏に住む割合が増加するということは、通勤時間の平均が上昇して出生率の低下も相関してくることになります。

 

東京都に住む25~29歳(日本人)の割合 青線:男性 赤線:女性

2024年では25~29歳の男女が東京都に住んでいる割合は15.2%で同じになっています。2008年に1.1%の男女差がありましたが、女性が東京都に進出する人が増えて追いついた状況です。25~29歳女性が東京都に住む率が増加している背景としては、女性の四年生大学の進学率がこの20年間で2倍になったのが大きな要因と思われます。